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錬星舎を訪ねました2

ガラス工房錬星舎の池上直人さん、西村由美さんご夫妻に会いに行きました。

工房は今は冬眠中ということで、炉に火は入っていませんでしたが、

炉のこと、ガラス製作のこと、お二人の歴史などのお話を伺って来ました。

冬眠の間にエネルギーを蓄えて、一気に爆発させるんですね、と申し上げたら、

まあ、そうですね、と池上さん。

2002年に長野県中川村に工房を移転してから16年、

ガラス作家は皆そうするように、炉、徐玲炉など全部ご自分で設計しての手作り。

外に大きなガスのタンクが4本、

一旦炉に火が入ってから炉の温度が1600度まで上がるのに

何日もかかる。ランニングコストを考えると、

需要の多い夏場に向けて一気に製作するのだそうです。

なので、今は冬眠中。

ですが、アトリエ木里の展示のために近いうちに火を入れるとのこと。

 

池上さんは、元々は大学で哲学を勉強されていました。

興味のあった現代美術には、美大に行くより、哲学という入口から入って行くことを

考えていたそうです。卒業後、普通に就職して働いていましたが、

ある日、ガラスを作ることに出会って、

これは今まで自分の中に、というより、人間の中にすら元来ないものだ、

と衝撃を受けたということです。

焼きものは土をこねてかたちを作り、乾かして焼成をする、

それと違ってガラス製法は、偶然の発見としか言いようのないもの。

2000年以上前にガラス原料を発見し技法にたどり着いたことは、

人の叡智と言うか神の意思というか。

確かに科学の系譜がまだ明らかでない頃、ガラス製法があったというのは

ものすごいことかも知れません。

これだ、これしかない、と、池上さんは会社をやめて東京ガラス工芸研究所に入り、

ガラスの勉強を始めました。

そこで、西村由美さんに出会ったということです。

 

西村さんは高校卒業後すぐに研究所に入って、様々の技法を学びながら

吹きガラスの世界に魅せられてのめり込んでいったと。

結婚されて、4人のお子さんを育て、

お腹の大きい時もずっと製作を続けていらしたそうです。

最初の頃の作品も見せて頂きましたが、

(こういうのも私は好きでしたが)

あの頃はどうしても作品の中に自分の痕跡を残したくて、

いろいろなことをしたけど、

経験を重ねた今では、もっとガラスのちからを信頼して

自分が自分が、ということをしなくなった、という西村さん。

四人のお子さんを育て上げた、という経験と無関係ではないような気がします。

 

お二人の作風は違っていて、

池上さんはとろけるようなフォルムの透明なガラスの中に気泡が美しく混ざり、

(この気泡にも化学的に入れる方法と物理的に入れる方法があるそうです)

西村さんは特殊な方法で絵の具で描いたような色ガラスが特徴。

溶けたガラスは決して素手で触れるものではないので比喩的な表現ですが、

火の中で溶けて揺らいでいるものが、自分の手のうちで形になっていく。

そういうことが、作る者を飽きさせることがなく魅了し続ける、という池上さん。

そして、他の工芸と違うのはその製作過程のスピード。

溶けているものが冷めて固まるまでの限りある時間の中で形を作って行くには、

瞬時の決断と偶然の力を受け入れることも大切なように感じます。

 

とても奥の深いガラス製作の世界。

私ももっと若かったら飛び込んでいたかも知れません。

今度はぜひ炉に火が入っていて、製作しているところを見せて頂きたいな、

と思いつつ、工房をあとにしました。

 

錬星舎の仕事展は

3月16日〜24日。20日休廊です。

どうぞお楽しみに。

 

 

 

 

 

 

2019.02.06 Wednesday|-|by アトリエ木里


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